うつくしいもの帖|はじまりの前の気配
まだ何も始まっていないはずなのに、
すでに満ちているように感じる瞬間があります。
音はなく、動きもなく、
人の気配さえ遠のいた空間。
けれど、その静けさの中に、
これから始まるすべてが、そっと置かれているように思えるのです。
舞台に灯りが入る前、
誰もいないはずの場所に残る温度。
それは、目に見えるものではなく、
かたちとして残るものでもありません。
ただ、そこにあると感じるもの。
うつくしいものは、
そうした気配の中に、静かに息づいています。